*先取特権(さきどりとっけん)
法律が定めた特別な債権を有する者が、債務者の一定の財産から、
優先弁済を受ける担保物権のことを先取特権といいます。(民法3
03~341)
○先取特権は、目的物から優先弁済を受けるものであり、目的物を
競売し、弁済を受けることができます。
「不動産関係の先取特権」
*不動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の
不動産について先取特権を有する、と定めています。(民法32
5)
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
*不動産保存の先取特権
不動産の保存のために要した費用に関し、その不動産について先取
特権が認められています。(民法326)
*不動産工事の先取特権
工事の設計、施工、監理をする者が、債務者の不動産に関してした
工事の費用に関し、その不動産について先取特権が認められていま
す。(民法327)
ただしこの先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が
現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する、というこ
とです。増加額が現存しなければ先取特権は認められません。(民
法327-2)
*不動産売買の先取特権
不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、そ
の不動産について存在するということです。(民法328)
売主が売買代金を受け取らずに、買主に所有権移転した場合などは、
これにあたります。
○不動産の先取特権は、その登記をしなければ第三者に対抗できま
せん。
規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使するこ
とができます。つまり抵当権に優先します。(民法339)
ただし、不動産売買の先取特権については、抵当権の規定が準用さ
れ、通常の優先順位となり、登記の順番で優先順位が決まっていき
ます。(民法341)
*不動産保存の先取特権の登記
(民法337)不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完
了した後直ちに登記をしなければならない。「直ちに」と厳しい。
*不動産工事の先取特権の登記
(民法338)不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める
前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合、工事
の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額について
は存在しない、つまり、だめですよということです。
工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が
選任した鑑定人に評価させなければならない、とこれまた厳し
い。
*不動産売買の先取特権の登記
不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同
時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記し
なければならない。(民法340)
(参考)
【物権】
・民法で定める物権
所有権、用益物権、担保物権、占有権の4種です。
・民法で定める担保物権
留置権、先取特権、質権、抵当権の4種です。
【民法】 第八章 先取特権 第一節 総則
(先取特権の内容)
第三百三条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、
その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁
済を受ける権利を有する。
(物上代位)
第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷
によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使する
ことができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前
に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価について
も、前項と同様とする。
(先取特権の不可分性)
第三百五条 第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。
第二節 先取特権の種類
第一款 一般の先取特権
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債
務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(共益費用の先取特権)
第三百七条 共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のた
めにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用につい
て存在する。
2 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについ
ては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対して
のみ存在する。
(雇用関係の先取特権)
第三百八条 雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人と
の間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
(葬式費用の先取特権)
第三百九条 葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式
の費用のうち相当な額について存在する。
2 前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした
葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
(日用品供給の先取特権)
第三百十条 日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべ
き同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の
飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
第二款 動産の先取特権
(動産の先取特権)
第三百十一条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、
債務者の特定の動産について先取特権を有する。
一 不動産の賃貸借
二 旅館の宿泊
三 旅客又は荷物の運輸
四 動産の保存
五 動産の売買
六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同
じ。)の供給
七 農業の労務
八 工業の労務
(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その
他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産につ
いて存在する。
(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲)
第三百十三条 土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用
のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動
産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
2 建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動
産について存在する。
第三百十四条 賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特
権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受け
るべき金銭についても、同様とする。
(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲)
第三百十五条 賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人
の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期
及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
第三百十六条 賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷
金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
省略
第三款 不動産の先取特権
(不動産の先取特権)
第三百二十五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、
債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
(不動産保存の先取特権)
第三百二十六条 不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のため
に要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行の
ために要した費用に関し、その不動産について存在する。
(不動産工事の先取特権)
第三百二十七条 不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又
は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、
その不動産について存在する。
2 前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が
現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
(不動産売買の先取特権)
第三百二十八条 不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びそ
の利息に関し、その不動産について存在する。
第三節 先取特権の順位
(一般の先取特権の順位)
第三百二十九条 一般の先取特権が互いに競合する場合には、その
優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別
の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の
先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効
力を有する。
省略
(不動産の先取特権の順位)
第三百三十一条 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競
合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げ
る順序に従う。
2 同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間
における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後によ
る。
(同一順位の先取特権)
第三百三十二条 同一の目的物について同一順位の先取特権者が数
人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を
受ける。
第四節 先取特権の効力
(先取特権と第三取得者)
第三百三十三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその
第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することがで
きない。
(先取特権と動産質権との競合)
第三百三十四条 先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産
質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一
の権利を有する。
(一般の先取特権の効力)
第三百三十五条 一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から
弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受け
ることができない。
2 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的
とされていないものから弁済を受けなければならない。
3 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入するこ
とを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることが
できた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行
使することができない。
4 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の
代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的で
ある不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
(一般の先取特権の対抗力)
第三百三十六条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなく
ても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、
登記をした第三者に対しては、この限りでない。
(不動産保存の先取特権の登記)
第三百三十七条 不動産の保存の先取特権の効力を保存するために
は、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
(不動産工事の先取特権の登記)
第三百三十八条 不動産の工事の先取特権の効力を保存するために
は、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。
この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権
は、その超過額については存在しない。
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判
所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権)
第三百三十九条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵
当権に先立って行使することができる。
(不動産売買の先取特権の登記)
第三百四十条 不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、
売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていな
い旨を登記しなければならない。
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